ラジオ少年時代から現在まで 真空管アンプ、無線機の工作をしてきましたが デジタル全盛の時代においても電子回路工作、修理にはなくてはならない測定器と思っています。
古いものを捨てられない症候群ですが 初期性能を維持するには時間、費用と労力が伴います。
この作業も道楽と考えれば時間と労力は楽しまなければなりません。費用の先立つものは・・・
YEW TYPE 3201 回路計(テスター) MULTIMETER 外観写真
YEW3201 回路計(テスター) |
長期間使用してきましたテスター(回路計)は 横河電機 YEW製 TYPE3201 国内唯一の〄規格のテスターです。デジタルテスターと違い電圧、電流測定においては指示用電源が必要でなく長時間連続して測定が可能です。ラジオ少年時代には 三和JP-5Dなどを使用しておりましたがメーター感度が悪く ハイ・インピーダンス回路の測定においては測定誤差も多く入門者用のテスターでした。
YEW3201 Class AA |
1970年製で73年頃からCMで使用していました。そのYEW3201は現在でも所有していますが 動作不良となっています。 数回メーカー修理をしましたが現在はメーター指針(電流計)が不安定(バランス不良)な指示をするため 校正後メーター表示を水平のみとして使用は可能です。過去に誤測定、落下事故などで正常に測定ができなくなりました。又指針パネルもはんだクズなどで傷が入っています。現場において多くの測定使用したため故障してしまいました。完全に修復するにはメーター交換、高額出費となりますので現在は放置状態です。しかし現状では誤差は許容範囲内ですのでサブの回路計として使用しています。真空管アンプ調整時には複数ヶ所同時測定の時に便利です。
現在道楽作業においては自衛隊配備品の放出テスターYEW3201を 複数台所有しており その中には アルミダイキャスト防水ケースに組み込まれた 深緑色に塗装されている軍用テスター JMU-Q1を一台所有しています。特に真空管アンプ・電子回路時々症状の状態監視などにの修理、調整に重宝しています。
JMU-Q1 自衛隊放出 軍用テスター
JMU-Q1 自衛隊仕様回路計 |
自己校正の必要性
大手企業においては ISO9000シリーズで規定されている測定器の校正作業をメーカーに校正依頼します。高額な校正費用が発生します。道楽では費用の出費はなかなかできません。
小生の場合は内部構造を把握し自己で随時校正作業を実施します。小さな会社・個人経営のサービス店などは校正作業などはほとんどしていませんね。取引証明では絶対に必要な作業です。趣味・道楽作業についても校正作業は重要と思います。
YEW 2786-10との抵抗値校正 |
現在においてはデジタルテスターも使用していますが 骨董品の人間には骨董品のアナログデバイスのテスターも捨てがたく思い 利用しています。人間も時々頭の中の整理・校正作業が必要ですね !!!! 人間の性格は大きく変化できません。
抵抗値測定の誤差調整はできません。回路計内部の固定抵抗値で精度は確定します。測定誤差の確認のみとなります。誤測定で焼損する抵抗は精度の高いメーカーより指定された抵抗で修復する必要があります。
ダイアル型可変抵抗器は抵抗値により精度が 0.1~0.05%誤差 の抵抗器が使用されていますので校正作業ができます。
ダイアル型可変抵抗器(DECADE RESISTANCE BOX) YEW TYPE 2786 10 0.05~0.1%誤差 と校正中のYEW3201
自己校正作業には精密級の 0.5級精密測定器 YEW TYPE 2012 00 とTYPE 2013 18 JIS C 1102 0.5級相当 を使って基準電圧発生装置、スライダックトランスを使用して交流電圧、直流電圧、電流の校正作業を実施。
同様に 随時他の測定器類も 自己で修理、調整、校正して管理した上で 道楽の工作、調整、修理作業に活用しています。
YEW 3201 回路図 (JMU-Q1マニュアルのコピーから手書きでおこしました)
回路図 |
回路図に表示されている抵抗番号と実際に基板に記載されています番号には違いがあります。R-1は同じですが回路図の R-3⇒R-2 R-4⇒R-3 R-5⇒R-4 R-6⇒R-5 R-2⇒R-6 となっていました。回路図についてはJMU-Q1の資料をそのまま転記です。
YEW 3201のスペックとして 直流電圧測定時には 100KΩ/Vの規格であり DC300Vレンジであれば回路計内部抵抗値は30MΩの抵抗値で動作します。12Vレンジでも内部抵抗は1.2MΩです。
回路計心臓部の電流計は 高感度電流計 最大目盛にて 10μA、内部抵抗9KΩ±20%、JIS C 1102 1.5級 相当のトートバンド(TAUT BAND)支持方法電流計を使用しています。
抵抗値測定用LR20・R20**(UM-1) 単一乾電池1個を搭載。
メーター部の解析をしますと電流計の内部抵抗値は 9KΩ±20% の規格であり回路の直列抵抗値は VR-1 5KΩ(最大値)+R22 10KΩ + 電流計抵抗値 9KΩ =24KΩ となります。電流計の分流抵抗値を計算してみますと 1.8K+180+18+1.8+0.192=1999.992Ω となります。オームの法則により 分流抵抗器が 2000Ω の場合 測定レンジが0.12mA ですので 電圧を求めると E=0.24V と計算できます。電流計部には 約0.1V が加わることにより電流計がフルスケールとなります。電流計誤差吸収を VR-1 5KΩ の半固定抵抗で感度調整します。
電圧測定レンジにおいて最小電圧測定レンジが 0.3V ですので 回路抵抗を計算すると100KΩ/Vですから 抵抗値は 30KΩとなります。R7 が 8KΩ ですのでメーター部の合成抵抗値が 22KΩ でなければ各電圧の測定精度は保つことができません。ゆえにメータ部は22KΩと推察できます。
電流計の精度がよくないと 分圧抵抗・分流抵抗の精密抵抗器で固定されており 各抵抗器の値が正確でなければ 各測定レンジでの精度確保はできません。
測定範囲及び許容差、使い方
直流電圧 0v~0.3v 1.2v 12v 30v 120v 300v 1200v 許容差 最大目盛値の±2.5%
直流電流 0~0.012mA、0.12mA、1.2mA、12mA、120mA、1200mA ±2.5%
交流電圧 0~3v、12v、30v、120v、300v、1200v 許容差 最大目盛値の±3%
抵抗 ×1,×100,×10K (目盛 0~2K) 目盛長の±3%
低周波出力 -20~11/23/31/43dB 許容差 最大目盛値の±3%
DC電圧 100KΩ/V AC電圧 10KΩ/V の内部抵抗値
メーター目盛板 JIS C1202 |
YEW3201は抵抗測定の時には単一乾電池 1.5V の電圧で動作します。他社のメーター感度の悪いテスターであれば 高抵抗値測定するときに 006P 9V の内蔵乾電池を使用している機種もあります。テスターにより搭載電池電圧が違いますので注意が必要です。
×1 約150mA 1.5V/ R24"8Ω+R29"1.45Ω
×100 約1.5mA 1.5V/ R24"8Ω+R29"1.45Ω+R25"792Ω+R27"203Ω
×10K 約15μA 1.5V/ R24"8Ω+R29"1.45Ω+R25"792Ω+R26"79.2KΩ+R28"73.3KΩ
(実回路においては VR3"最大40KΩ+電流計部"22KΩが並列接続となります)
の電流が流れますので FET半導体、C-MOS IC回路を点検するときには回路電流と電圧を頭において測定してください。半導体を損傷する可能性があります。電池の極性によりマイナス端子リード(黒色)にプラスの電圧が発生します。
この動作原理を理解しますと ダイオード導通試験時にはプラス測定リード(赤色)にカソード、マイナス測定リード(黒色)をアノードに当てた場合は電流ガ流れます。シリコンダイオードの順方向電圧は 0.6~0.7Vですので電流が流れます。又発光ダイオードにおいては順方向電圧が 1.8V~2.2V程度ある発光ダイオードがあります。内蔵電池電圧が低いため断線状態となり電流が流れません。外付け乾電池を直列として回路電圧を上げることにより発光試験が可能です。測定レンジも×100レンジで測定することをお勧めします。
他社のテスターで単3乾電池2本搭載のテスターは LED赤、緑色の発光試験は電池電圧が3Vのため動作試験が可能です。
同様にトランジスターの導通試験において重宝しています。微妙な抵抗値の変化を 針の指針位置で体が覚えていますので デジタルテスターに比較して良否の判断が素早く出来ます。
導通テスト時 針が振れるか振れないかの判断ですので デジタルテスターより使い方が簡単明瞭です。応答スピードも早くなります。
抵抗測定値としては2MΩ程度までの測定能力となります。20MΩまでの測定は出来ますが 測定誤差が大きくなります。固定抵抗値測定においてはデジタルテスターのほうが数値間違いもなく正確に測定ができます。
内蔵乾電池を入れ替える場合は 液漏れ事故の少ないアルカリ乾電池の使用をお勧めします。アルカリ乾電池は内部抵抗が低く測定レンジを切り替えたときにテストリードを短絡しての零調整の時に変動範囲が少なくなります。
OUTPUIT端子の使用方法
OUTPUT端子には V,A,Ω端子から0.2μFのコンデンサーが接続されており 直流電圧を阻止して交流電圧だけを測定する端子です。回路計のメーター表示にはdB目盛が記入されており AC,3VレンジでdB目盛が記入されております。dBの単位は 600Ω 1mW の時電圧値 0.775Vを0dB(**dBm)としております。AC各レンジにおいてはメーター内に加算するdB値が記入されていますので指針で表示したdB値にレンジによる加算dB値を加えた数字が測定値となります。
コンデンサーの容量により200Hz以上ではほとんど測定誤差が発生しませんが 特に低い周波数の時にはAC.3Vレンジでの測定誤差が大きくなります。高電圧レンジほど低い周波数で誤差が少なくなります。(20Hz AC,3Vレンジの場合誤差が-40%となります)
上記スペックはJMU-Q1での記述による数値であり現在販売されているTYPE 320110とは多少数値が異なります。
測定誤差の少ない測定方法
YEW3201のメーター指示部にはミラーが取り付けられており指針とミラーに写った指針が重なるようにした上で表示板の数値を読み取ることにより測定誤差が少なくなります。
測定前には指針が0の位置を示しているかを確認します。もしずれているようであれば指針位置調整をマイナスドライバーを使用して調整します。メーターパネル下部にある零位調整器を調整。
メーターバランステスト |
水平時に零位置に調整されていても横倒し、又垂直としたときに零指示が大きく狂っているときにはメーター内部のバネの劣化があると思います。(メーターバランス不良)
メーターを交換しなければなりません。
通常テスターでは測定するときにはなるべく水平に設置して測定することにより測定誤差が少なくなります。
測定の便宜上斜め設置、立てて測定する場合もありますが 正確に測定するには水平設置としてミラーを使って誤差を少なく測定してください。
測定する場合は常温で測定することをお勧めします。-10℃±5%、40℃±4%の誤差となります。極端な環境で測定使用する場合は測定誤差が大きくなります。常温の20℃前後で使用するのがベストです。
表示されている目盛に注意してください AC電圧測定目盛とDC電圧測定目盛があり読み間違いをしないでください。フルスケール電圧表示は同じですがダイオードで整流した電流で動作しているため非直線的な目盛となりますので メーターの振れが少ないほど非直線部分での誤差が大きくなります。
※ AC目盛、DC目盛に注意 スケールが異なります !!
YEW3201の自己校正作業
校正に使用する精密級測定器 0.5級
精密級 直流電圧・電流計 YEW 2012 00 Clsss0.5 |
精密級 交流電圧・電流計 YEW 2014 00 Clsss0.5 |
DC(直流)電圧校正
直流電圧校正 |
DCレンジにおいては直列に接続された倍率抵抗器の比率で測定電圧レンジが変化します。
R7~R14までの抵抗により精度が確定しております。誤測定により固定精密抵抗器の破損事故は少ないと思われますが9の数字と18の数字に於ける倍率を掛け算しますと抵抗値が判明します。直流電流測定は直列に接続された分流器で測定できる電流値は確定します。抵抗器はR1~R6の抵抗器が分流器です。特に誤測定で抵抗器を焼損する可能性が大きい抵抗器です。
DC電圧、電流の基準になるメーターコイルに直列に接続されたVR-1 5KΩ(B)の半固定抵抗を調整して電流計感度調整をします。指針がフルスケールになるように基準電圧発生器に接続し 並列に0.5級精密電圧計と表示電圧が同じとなるように VR1を調整します。調整、校正測定電圧としては DC3V で校正します。
直流 電圧・電流校正用測定器 YEW TYPE 2012 00 JIS C 1102 0.5級相当
AC(交流)電圧校正
YEW3201回路計基板 |
DC電圧校正後調整してください。
ACレンジは直流と同様に各測定レンジに対応した直列に接続された抵抗器の倍率器で動作しております。倍率器の抵抗は R15~R19までの抵抗器が各測定値の抵抗器となります。DC測定時の1/10の抵抗器を使用しており AC300Vレンジでは 内部抵抗値3MΩとなります。
交流測定時には倍率器で測定レンジが固定されおり ゲルマニュームダイオードで全波整流され 得られた直流電流でメーターを動作させます。
ACボルト測定において倍率器の精度で各レンジの誤差が固定されております。交流を整流した後 VR-2 5KΩ(B)の半固定抵抗でメーター感度調整します。スライダックトランスなどを使用して AC120V を出力します。 DCと同様に0.5級精密交流電圧計と 並列接続しメーターフルスケールAC120Vを校正します。交流周波数は商用電源である50Hz,60Hzの基準交流電圧で校正します。
交流電圧校正用測定器 YEW TYPE 2013 18 JIS C 1102 0.5級相当
DC電流、抵抗値測定校正
COM端子に保護FUSE 2Aを追加取り付け |
直流 電圧・電流校正用測定器
YEW TYPE 2012 00 JIS C 1102 0.5級相当
抵抗値校正用測定器
YEW TYPE 2786 10
焼損した巻線抵抗器 |
上記記載のように 分流、倍率器の固定抵抗の精度で各測定レンジでの誤差が確定しますので 焼損事故等で抵抗器を交換するときには精度の高い精密抵抗と交換する必要があります。
誤測定により焼損する抵抗値
R29 1.45Ω RD1/2P R24 8.0Ω 巻線抵抗
YEW3201回路計基板パターン面 |
誤測定により焼損する抵抗値
R1 0.192Ω 巻線抵抗 R3 1.8Ω 巻線抵抗
特に 抵抗、DC電流測定レンジでの誤測定による回路故障の被害が大きくなります、過去の事例としては AC100Vの測定時 測定レンジの確認を怠ったため故障となりました。
YEW3201回路計 裏蓋を外しました |
邪道ですが焼損したR1,R3抵抗器のマンガニン線を分解し3W型の酸化皮膜抵抗器の表面に間隔を開けて巻きつけて修復が出来ました。0.5級の精密測定器と校正しながらマンガニン線の長さを半田付けで調整します。再使用するときにはマンガニン線の表面にある半田部分をペーパーがけする必要があります。個人的には抵抗器の直列、並列接続で合成抵抗を作成して校正すれば時間はかかりますが修復は可能と思います。修復時には2Aの保護ヒューズの追加をお勧めします。
経時変化でスイッチの接触不良が発生した場合は スイッチ接点部に微量のシリコングリスを塗布します。塗布前には無水アルコール等の溶剤を用い 綿棒などで接点を清掃します。 多量の注油は厳禁
現在販売されていますテスターには 保護ヒューズが取り付けされており誤測定でヒューズ溶断で内部回路保護となっていました。ヒューズ容量は2A小型が回路内に入った構造です。
メーター保護回路はメーターコイル並列にシリコンダイオード2個直列接続として双方向に合計4個のダイオードが取り付けられており0.6V×2=1.2V 以上の電圧がメーターコイルに加わるとダイオードでバイパスされメーターコイル保護回路となっています。同じくコイルに並列にC2フィルムコンデンサー0.1μF/200WVで平滑、リップル除去用として取り付けられています。
回路計校正用治具
左側の抵抗はDC電流校正用電流制限抵抗器を各種取り付けてあり 校正する電流レンジにあわせて選択します。右端の電球は自動車用W電球で大きな電流値を校正時に電流制限抵抗器として使用します。
校正用定電圧電源
可変定電圧電源 0V~13V 1.5A |
簡易校正用精密抵抗器・電流制限抵抗器 |
テスター使用後の保管状態として ロータリースイッチの位置は OFFの状態で保管してください。メーターが回路から測定端子が切り離した状態となります。
現在でも販売されている YEW3201回路計のカタログ
軍用 ミリタリー規格回路計
JMU-Q1とTS-352B/U |
軍用回路計(テスター) JMU-Q1について
軍用テスターは 米軍の ミリタリー(軍用)規格 に基づいて国産の回路計です。
元になる米軍のテスターは 型番 MULTIMETER TS-352B/U の回路計です。付属マニュアルは1967年に発行されており 初版は1956年と明記されています。
キャリングケースに収納された各回路計 |
左奥 自衛隊仕様 国産回路計JMU-Q1 横河電機製
右奥 米軍仕様 MULTIMETER TS-352 BARNETT INSTRUMENT製
手前中央 汎用回路計 YEW TYPE3201 横河電機製 (自衛隊品番 GMUH-1-E)
分解した JMU-Q1 |
JMU-Q1の装備品を分解しました。回路計本体、付属備品と分流器、倍率器のユニットです。
保護 FUSE 2A |
回路計のスイッチ基板に誤測定による保護回路部品の 2A FUSEが取り付けられております。回路図面上には記載されていません。
Ω測定用の乾電池は米軍の記載方法のJBA-30と明記されていました。
一般に国内での名称はLR20・単一乾電池と呼ばれています。乾電池の色は深緑色でアルカリ乾電池です。メーカー名の記入はありません。米軍の名称は BA-30
真にとマーク貼り付け |
テスター本体にJISマーク及び番号の記載したシールが貼られています。
JIS PREMISSION No.370074
メーターには製造年月日の表示がなく 抵抗測定零調整用通信型VRに 昭和48年7月の製造ロット番号が記載されていました。
自衛隊に納品されたのは 1972年以後に納品されたと判斷します。
外付け分流器・倍率器 |
分解しました外付け倍率、分流抵抗器です。
DC,6000V測定用に倍率抵抗器は
600MΩが取り付けられておりタイト製の測定端子に接続されます。
高圧測定には付属の高圧コード、接続コードA,Bを使用します。
倍率器コールド側の端子と回路計本体のV,A,Ωジャックに接続コードAの(赤色)で接続します。本体のCOM-端子は接続コードB(黒色)を測定する機器のコールド側に接続します。
測定位置としてはDC,1.2Vレンジを使用してメータースケールはDC,30目盛を読取 200倍した数字が測定値となります。(6000Vフルスケール)
DC,12Aの測定に分流器 0.01833Ωの抵抗器が取り付けられています。
測定する電流値が大きいため接続端子には正しく接続してください。
本体との接続端子 |
端子穴には接続コードA赤色と黒色を使用します。+側端子には赤色コードを接続し本体の回路計V,A,Ωジャックに接続。-側端にの穴には接続コードA黒色を接続し回路計本体の-COM端子に接続します。
測定レンジはDC,0.012mA測定レンジでメータースケールはDC,12目盛を使用します。
米軍の回路計については回路計本体でDC,10Aの電流測定及び外付け倍率器でDC,5000Vが測定できる回路計の仕様のため同等の仕様として作成されました。
汎用の回路計では軍用規格を満足できなかったため国産の軍用テスターは 汎用回路計にオプション装備で対応しました。自衛隊での実際の運用については 汎用の YEW3201型 の回路計を常用テスターとして使用されておりました。JMU-Q1は部隊の装備品として保管されており ほとんど保守運用面では使用されていないようです。入手時はほとんど新品の状態でした。JMU-Q1とYEW3201は約20年ほど前に複数台入手し活用し現在に至ります。現在山小屋にも常備品とし保管しており合計5台のYEW3201とハンディー型デジタルマルチメーター3台が活躍しています。精密測定用据え置き型デジタルマルチメーターも活躍します。
入手当時自衛隊放出品(払い下げ品)のためケースにあるべき名板が取り去られていました。軍用規格の回路計はその当時 軍用無線機において送信管(4CX350F/8322・7034)は数KVの高電圧で動作しており 汎用のテスターでは高圧プローブを使用します。オプションですと緊急事態の時には オプション品がないと測定できないため 一体型の回路計であれば測定リードも付属備品でケース内に収容されています。又10A分流器についても車載機器の保守に必要となるため装備しています。車載機器(戦車、航空機も含)はDC24Vの蓄電池で動作する軍用機器が大半でした。米軍の機器は新品の梱包品も入手が可能でした。入手した米軍用回路計は日本国内放出品とは程度が異なっていました。
米軍 軍用回路計 MULTIMETER TS-352B/U
TS-358/BU |
米軍 ミリタリー規格の回路計 TS-358B/U です。
箱入り未開封品を約20年ほど前に入手しました。形からすると相当骨董的なデザインのテスターです。測定値表示用のメーターは丸型であり現在では ほとんど見かけないメーターを使用しています。電気特性を確認しましたが JMU-Q1に比較して相当メーター感度の悪い測定器です。測定電圧レンジ切り替えは測定リード線のコネクターをさし変えて測定レンジを変更します。抵抗値と電流値の切り替えとファンクション切り替えはロータリースイッチで設定します。
回路計本体 MULTIMETER ME9 H/U の表示があります。SERIAL NO.8576B
5000V倍率器 MULTIPLIER KIT MX-815 B/Uの表示があります。SERIAL NO.8576B
ケースの名板 MULTIMETER TS-352の表示があります。SERIAL NO.8576B
製造会社名 BARNETT INSTRUMENT CO.
TS-352B/U メータースケール全景 |
測定できる仕様
DC電圧 2.5V,10V,50V,250V,500V,1000Vと倍率器で 5000V 20KΩ/V
DC電圧 2.5V,10V,50V,250V,500V,1000V 1KΩ/V
DC電流 250μA,2.5mA,10mA,50mA,100mA,500mA,2.5Aと10A
AC電圧 2.5V,10V,50V,250V,500V,1000V 1KΩ/V
Ω R×1,×10,×100,×1000,×10K 目盛は 0~1000
抵抗値測定用の電池として単一乾電池1個、特殊4.5V乾電池3個を使用します。
TS-325B/U 2 ファンクションスイッチ・零調整ツマミ・抵抗、電流切替スイッチ |
添付されていた試験成績書 |
TS-352B/U に添付されていました試験成績書(TEST DATA)です。1982年7月の検査日とサインがあります。
基準電圧、電流発生装置の指示電圧を記入してあります。回路計の指定された指針位置での指示電圧、電流表示にに対して基準信号の数値を記載して測定誤差が規定値以内にあるかを試験します。指定指示電圧は各測定レンジのフルスケール値で測定しています。倍率器を使って5000Vのレンジは DC2000Vを校正電圧と記入されていました。誤差範囲が記入されており各項目は誤差範囲であり検査合格です。テクニカルマニュアルにもサマリーシートとして誤差範囲が記入されていました。
DEPARTMENT OF THE ARMY TECHNICAL MANUAL の抜粋
テクニカルマニュアルの抜粋を表示します。使用方法から回路説明、校正方法まで非常に詳しく記載されています。
テクニカルマニュアル表紙と付属品の品番を記載
付属品品番 |
回路動作説明 例として抵抗値測定回路
回路図 |
回路計内部品番号 |
分解写真 |
回路計回路図A
回路図A |
回路計回路図B
回路図B |
回路計校正結線図 |
抵抗値校正結線図 |
校正データーサマリーシート
サマリーシート |
校正の方法は基準器(キャリブレーター)からの信号で回路計の指示値を読み取り その値が誤差内の規格内になっているかを試験します。
国産の軍用測定器にも同様の日本語で書かれたマニュアルが付属していました。米国軍用と同様に動作原理・整備の方法など詳しく書かれています。現在原本を借用してのコピーしか持っておらず汚いコピーです。原本は手元にはありません。発行は㈱横河電機製作所と表紙に書かれていました。
TS-352B/U付属品として ポケットサイズのテクニカルマニュアルが付属しています。
以前入手した真空管試験機 TV-7 D/U のマニュアルも見たことがありますが動作原理、修理方法まで詳しく書かれたマニュアルとなっていました。ただし英文で書かれているため翻訳、解釈において手間取りました。
ディスカウントショップで購入したデジタル回路計の実力テスト
先日衝動買で購入しましたミニデジタルテスターです。
衝動買いのデジタルテスター |
内部にはモニター用 006P 9V の積層乾電池が内蔵されております。
製造産地は MAID IN CHINA と表記されています。付属品は1枚の日本語取説と測定リードが付属されていました。
大きさは 125×69×24 重さ約130gのテスターです。
一応回路計としての測定レンジは各種搭載された安価なテスターです。
直流電圧測定校正
今回の自己校正用測定器
YEW TYPE 2012 00 JIS C 1102 0.5級相当
を使って 可変定電圧電源からの直流電圧で校正しました。
デジタルテスターは 20.0V以上になると1表示となるため 19.99Vを表示させました。精密級の精密電圧計で指示電圧を読むと20Vを示しておりほとんど誤差がありません。
DC 20V 校正 |
フルスケール値 300
測定レンジは DC30V
校正に使用した YEW 2012 00
1000Ω/V の精密測定器です。
直流電圧計内部抵抗測定 |
DC電圧測定時の回路インピーダンスを YEW 3201 回路計の抵抗測定レンジ×10Kで測定すると スケールが 100 の目盛数値を示しており 掛け算すると 1MΩ と測定できました。
各DCレンジとも同じ数値を表示しており各レンジの回路抵抗は 1MΩ でした。
20Vレンジの場合は 50KΩ/V 相当
200Vレンジの場合は 5KΩ/V 相当
2Vレンジの場合は 500KΩ/V 相当
以上の結果より 低い電圧測定ほど優秀な回路計です。
交流電圧測定校正
AC電圧校正作業 |
スライダックトランスが山小屋においてあり今回は商用電源、我が家のAC100Vのコンセントにステップアップトランスを接続してデジタルテスターの電圧表示と 精密AC電圧計を並列接続して表示電圧を測定しました。
精密交流電圧計
YEW TYPE 2014 00 JIS C 1102 0.5級相当
を使用して校正します。
接続ターミナルの変更で AC300V,AC150V レンジの切り替えができます。
YEW 2014 00 可動鉄片型 水平測定の表示 |
測定結果
規準電圧2014 00 表示 119V
デジタルテスター表示 116.7V
YEW AC電圧計表示 119V
誤差電圧 -2.3V となりました。
誤差を %で表示すると 約-1.9%誤差となりました。 DCと同様、非常に優秀です。
精密交流電圧計には 可動コイル型(可動線輪型)(moving-coil type) のメーターではなく 可動鉄片型 (moving-iron type) のメーターがよく使用されます。
可動コイル型交流電圧計は交流を直流に変換します。 フレミングの法則により 永久磁石磁界内でF力が発生、指針を動かします。交流を直流に変換するため 整流器を使います。
昔の測定器では全波整流亜酸化銅又はセレン整流器を使ったものもありました。現在は周波数特性の良い点接触型ゲルマニウムダイオードを使用します。なぜシリコンダイオードを使用しないのは 順方向電圧(0.6V~0.7V)が大きいからです。順方向電圧の小さいゲルマニウムダイオード(0.1V~0.2V)を多用します。
上記の理由により低い電圧、電流の測定において 順方向電圧を無視できなくなり ダイオードの非直線部による メーター目盛が均等とはなりません。
可動鉄片型であれば交流電流による磁力線の強さで鉄片を動かします。鉄片が動作するため部品点数が少なく 1/3以上で目盛がほぼ均等になります。しかし指針が余り振れない場所での直線性は悪くなります。又高感度の交流電流計は見かけません。精密測定器のメーター目盛は ほとんど手書きで記入します。メーターにより誤差があり表示指針位置が微妙に違うため精度を確保するための作業です。
YEW 2012 00 可動コイル型 水平で測定のマーク |
針の振れの少ない非直線部分であっても基準器と校正してメータースケールを手書き記入しているため測定精度は確保できていると思います。
汎用のYEW3201のメーターは可動コイル型です。目盛は印刷されており メーターの精度がよくないと量産できません。しかも誤差が少ないメーターです。
交流電流測定器としてはハンディータイプでクランプメーター(クランプテスター)が多く使用されております。回路網を切断せずに電線に流れる交番電流により渦磁界が発生します。磁力線をトランスで交流信号に変換し エネルギー量を計測する測定器です。デジタル、アナログ表示方式があります。高感度タイプの測定器は信号を増幅し微小電流値が測定できる測定機器もあります。絶縁抵抗計を使用せず、回路を切断せずに漏電が測定できるようになり便利になりました。C・T(カレントトランス)を使用してパネルアナログメーター表示、A/D変換してデジタルレベルで電流を監視する測定機器が主流となり マイコンで電圧・電流をコントロールする制御機器が増えました。特に半導体制御回路では絶縁抵抗計での漏電測定は 半導体を破損する可能性があるため使用できません。
抵抗値測定校正
抵抗値測定校正は 横河 YEW 3201 の説明と同じです。 可変抵抗器 YEW TYPE 2786 10 ダイアル型 を使用して校正します。
精密可変抵抗器がない場合は 市販されています 精密抵抗 誤差1%又は0.5%誤差の抵抗器を違った数値を購入し その抵抗を計測して自己校正は可能です。
揃えたい抵抗値としては 1MΩ、100KΩ、10KΩ、1KΩ、100Ω、10Ω などを揃えておきますと便利です。
校正の結果 誤差は殆ど無く 多くても数%誤差となっておりました。10Ω以下の抵抗値では誤差が大きくなりテスターリード短絡時 200Ωレンジで 残留抵抗値が1.5Ωとなっており0Ωになりません。
残留抵抗値が誤差を大きくしている理由です。測定リード線の種類でも多少変化します。
通常使用します固定抵抗器でも 現在販売されている抵抗器は 5% 誤差のものが大半です。多少誤差範囲が大きくなりますが 自己校正としては使用することができます。時々自分の使用している 回路計(テスター) の性能を把握する必要があります。
直流電流測定校正
ミニデジタルテスターの使用説明書には詳細な仕様が明記されておりません。
今回直流電流測定レンジの内部抵抗を YEW 3201の抵抗レンジを使って測定。
10Aの分流抵抗値を考察しますと 約10mΩ と推察できます。2Aの分流器ですと分流比率から 100mΩと推察できます。
DC120mA 電流校正 |
10A 0Ω (詳細測定不能)
200mA 1.1Ω
20mA 10.5Ω
2mA 105Ω
200μA 1000Ω
上記が測定レンジに対応した分流抵抗器の測定値です。
今回ミニデジタルテスター、YEW 3201、精密直流電流計と電流制限ホーロー抵抗器を直列に接続して校正しました。
基準値 DC120mA |
校正電流値として120mAとしました。
可変定電圧電源の出力電圧を可変して精密電流計を 120mA 表示させ校正しました。
YEW 3201 表示 117mA
誤差2.5%
デジタルテスター 119.3mA
誤差0.58%
上記のような測定校正結果となり誤差はミニデジタルテスターが少なく 優秀でした。
基準値 20mA |
同様に電流制限抵抗器を変えてデジタルテスターの20mAレンジで測定
表示は19.96mAを計測誤差が少ないです。
他のレンジも分流抵抗値がわかっておりますので 例として定電圧電源電圧を10Vと仮定すればオームの法則により電流制限抵抗の数値が簡単に計算できます。後は目的の指示となるように電圧調整するだけです。
電流制限抵抗器は誤差、精度を重要視しなくて結構です。ラフに抵抗器の値を選別して校正してください。
回路計の種類によって校正値が異なりますので抵抗値を随時計算して校正してください。
基準となる直流電流計は YEW TYPE 2012 00 JIS C 1102 0.5級相当
計算事例として オームの法則が理解できれは 抵抗器に 10Vの電圧を加えた場合
10Ω 1A
100Ω 0.1A(100mA)
1000Ω 10mA
10KΩ 1mA
100KΩ 0.1mA(100μA)
の電流が流れます。
安価なテスターと思ってはダメです。数万円以上するテスターであっても 1000円以下のテスターであっても 誤差さえ把握すれば優秀なテスターとなります。テスターを壊したとしても考え方を変えれば1000円以下のテスターを買い換えすれば修理より安価となります。
交換部品100円、修理費用5000円 + 送料 どちらがお得か判斷してください。一般に販売されているデジタルテスターの精度は昔のアナログテスターと比較して非常に良くなっています。
使用する用途、目的に応じて デジタル、アナログ回路計の選択使用することをお勧めします。
今回の校正結果により 購入価格798円の デジタルテスターのほうが YEW 3201より誤差が少なく優秀でした。YEW 3201は製造後40年以上経過しており 落下、誤測定などにより精度がずれていると思います。製造当時は測定誤差は少なかったと思いますが 現在でも測定誤差はスペック内で動作しています。
測定器購入の時に試験成績書又は校正証明書が添付されるか、されないかで購入価格に大きな差が発生します。道楽で購入する場合は殆ど添付されておりません。後はメーカーの精度を信じるしかありません。ブランド名称が測定器カタログ記載の誤差を確約していると思います。
YEW 20130 18 可動鉄片型表示 |
身の回りにある直流基準電圧としては 腕時計に使われております 酸化銀電池を基準電圧として校正されても良いと思います。時計用は製造直後の少し高い電圧分を放電させて 安定した電圧になった電池を販売しています。例として SR41SW 公称電圧 1.55V
以上の記述により 身の回りのものを利用し 自己校正を推奨します。
道楽での測定器、自己校正作業のおすすめ
小生の場合道楽で骨董品の精密測定器を多数入手しました。
測定器類は アメジャンで 自衛隊、電機メーカー研究所、工場からの放出品がほとんどです。昔勤務先近くに USAジャンク屋があり 多種類のガラクタ放出品を現物確認して購入しました。数万円から数十万円以上する新品の測定器は個人の道楽では懐具合により 購入できません。又メーカー校正に出す費用もありません。ガラクタも自己校正すれば立派な測定器です。
昨今の電気関連の開発部門では 測定器を購入しても 新製品の開発スピードが早いため 固定資産として償却ができません。
自社で購入する企業が激減しました。今はレンタル、リース測定機器で校正費用も含まれた契約で使用です。現在中古市場ではリース、レンタル終了の放出品がほとんどです。
放出品の測定器において 測定器もデジタル化されており 測定データーをPCで記憶、データーシートも手書きから 測定データーにより PCで作成する測定器が多く 特殊プログラムが無いと物にならない機器が増えました。測定方法も変化し 電圧、電流などをA/D変換します。測定器操作も複雑となっています。又RS232Cから始まり イーサネットで遠隔監視するものまで現れました。骨董品の人間には道楽では使いにくい高額な現代の測定器です。
趣味の領域では高額な精密校正用測定器を品揃えせずに 常用測定器と 校正用の測定器とを分けて使用されることを推奨します。
現在販売されている精度の良いデジタルマルチメーターを使用して校正してください。0.5級・精密級、0.2級・副標準級以上の精度がある測定器も存在します。校正に使用する治具として可変定電圧電源、固定抵抗器、精密級固定抵抗器を適宜準備するだけで簡単に校正作業が可能です。トライしてください。
上記の中でも記述したとおり 現在販売されている国内測定器メーカーのデジタルマルチメーターでは 分解精度が良くなっており 標準器との誤差は殆どありません。
常用回路計は通常の測定作業に使用し 精密測定及び自己校正用の 複数台での運用し 自己校正することをお勧めします。
精密測定用 ADVANTEST R6551 DIGITAL MULTIIMETER |
抵抗値校正についても現在精密抵抗器が安価となっており 記述していますように 自己校正用の固定抵抗器を数種類揃え時々校正してください。
複数台 同じような測定器を同じ測定をし 鳴き合わせ で 簡易校正するのも一つの方法と思います。
基準値が判明すれば オシロ、ミリバルなど他の測定機器類も同様に 自己校正が可能となります。測定機器校正調整方法が不明であっても 誤差を把握するだけで 測定値から誤差分を差し引きすれば測定精度は上がります。
無銭庵 仙人 の 独り言
過去道楽とCMを通じて一番多く使用してきた測定器は テスターです。
ラジオ少年時代の初期においてはテスターが無く手探りで雑誌を読みあさり工作をしていました。。中学生時代は小遣いの金額も少なくテスターは高額な商品でした。当初は親戚のアンカバ無線家からテスターを借りていましたが 正月のお年玉で購入したのが三和のテスターで JP-5D 型 2KΩ/V の入門者用のテスターと記憶しています。その後型番は忘れましたがトランジスター回路をいじるために三和の25KΩ/V正方形箱型のメーターだけのテスター(sanwa F-80TR-D ? )を高校生の時代には使用していました。 もっぱらアマチュア無線を趣味として無線機を作成、電話ごっこに学業を忘れて没頭。無線従事者免状は中学生いがぐり頭の写真が貼られています。現在コールサインの復活でアマ無はほそぼそと古典芸能を運用しており 時々山小屋から電波を空間に放出し楽しんでいます。
その後の社会人になってからは金銭的にも学生時代と違い常用テスターとして 日置 OL-64D YEW 3201 とバージョンアップしてきました。 田舎から離れ自宅での真空管オーディオが趣味、道楽となり音波を空間に放出、現在に至ります。
高度成長時代に測定器メーカー品質管理担当者から聞いた話での記憶ですが メーター製造工程において 可動コイル電流計は髪の毛より細いエナメル線を手巻で巻かれていました。職人芸のおばさんがメーターコイルを作っていたようです。巻かれる材料の電線が納品されるロットにより微妙に精度が異なり テンションをかけながら巻いていますと材料の違いが判別できるほどのおばさん職人がメーターコイルを製造していました。YEW3201の場合 可動コイルの直流抵抗が 約9KΩ ありますので 電線がいかに細く又巻き数も多いかが想像できると思います。
測定器の可動コイルの断線事故はあまり見かけません。それに比較して LUX OY15-5 の出力トランスの一次側巻線の品質及び巻線工程がいかに粗悪であった ! との事が判明します。
ZENITH 6CK4 |
画像は 米国 Zenith社のテレビ垂直出力管 GT3極管 6CK4 です。
真空管テレビ全盛時代に垂直偏向出力管として使用されました。国内では製造されずほとんど流通していません。
我が家の白黒テレビは松下製で300mAトランスレスシリーズ 16A8 を使用。水平出力管は 25E5 で小生の記憶では 購入後一番最初に故障した真空管です。16A8 は 音声と垂直回路に使用されており 6BM8 と同等管です。
昼の間テレビ番組が放送していない時代で テストパターンの画像放送時間帯がありました。 垂直出力管の種類により 真円に近い画像は3極出力管でした。リニアリティーが良かったと記憶しています。垂直回路真空管の劣化に伴い直線性の悪い画面で 上下に黒い帯が出る故障と 画面が上下にくるくる回り V-HOLD(垂直同期)ツマミでよく調整しても画面が止まらない故障でした。14インチ白黒テレビの時代には 12B-H7A を交換すると故障が修復できた場合が多数ありました。一番多かった故障は水平偏向出力管の不良でした。
真空管オーディオでは未だに直線性の良い3極管が珍重されています。
時代が進み 1964年東京オリンピックの時代になると白黒テレビも14インチから大型化となりブラウン管も偏向角度が広くなり 垂直出力管として 双3極管 9RAL1 3極、5極複合管 12(17)JZ8 などが使われていました。又カラーテレビも普及しかけており、白黒テレビ真空管最終時代になると複合管が数多く使われ初期のテレビに比べて真空管の本数が少なくなりました。水平出力管とダンパー管が入った 33GY7 のコンパクトロン管もありました。
その後は真空管と半導体のハイブリッド構成となりました。白黒テレビはいち早く消費電力が少ないため小型オールトランジスター・ICテレビが普及しました。少し遅れて大型カラーテレビも真空管は半導体に席を譲り渡しました。カラーテレビのハイブリッド回路は1970年前後から始まり 最後まで残った真空管回路は 垂直出力・水平出力・高圧整流回路です。
半導体回路のテレビ普及で 真空管全盛時代と違いテレビの故障修理回数が激減したのは1975~80年頃のことです。
国産初期のカラーテレビ垂直出力双3極管 6E-W7 10E-W7 |
先輩から聞いた話です。 白黒テレビの初期には 垂直偏向出力管は 6SN7-GT (MT管 6C-G7 相当)双三極管が使用されており " 国産の 6SN7 は すぐエミゲンとなり交換しなければならなかった" 話されておりました。シルバニアかRCAの球が良かったとの話でした。
日本の真空管技術も まだまだ低かった時代です。水平出力管は UY-807 の改良球 6B-G6-G を使っていたようです。ブラウン管は丸型、偏向角度70度のRCAを使用していたと言われたのを記憶しています。小生はそのテレビセットを見たことはありません。
カラーテレビの初期には国産の垂直出力管は白黒テレビに比較して出力電力も大きくなり MT管9ピンの足でありながらガラス管直径の大きい 6E-W7 双3極管が16インチ、19インチのカラーテレビに使用されました。その後3極、5極複合管のコンパクトロン管 21L-U8 が使用されるようになり この時代の記憶として5極管の垂直リニアリティーが悪かったと記憶しております。その当時の水平出力管は 6JS6-A,6KD6 が使用されており アマ無線 SSB送信機の終段管として数多く使用されていました。
米国での垂直3極出力管として 6EM7,6BX7-GT,6S4A が開発されて使用されていました。有名な 東芝のGT型3極出力管 6G-A4 の元となった真空管が 6BX7-GTです。
形状の違う 6CK4 |
東芝 6G-A4 に似通った特性の 6CK4 があります。テレビ垂直出力管として設計されています。殆どの場合 真空管のシングル動作であり 特性として非常にばらつきが多い真空管です。プッシュプルでアンプを設計するためには複数本から特性の揃った真空管を選別するペアリングが必要です。
同じ 6CK4ですが Zenith は真空管製造メーカーではなく 写真のように全く異なる構造の真空管が同じ型番を付加されて販売されていました。
灰色のプーレートの真空管は管壁に記載されている品番表示から推察するとGE製と思います。
黒色のプレートについては製造会社は不明です。多分WestinghouseもしくはTUNG-SOLと思います。当時RCAは商社であり製造工場は外注でした。アメリカでの主な真空管製造元としては SYLVANIA,NationalUnion,WesternElectric,BENDIX,REYTHEON,KEN RADなどが有名です。
6CK4 の規格
最大プレート電圧 550V プレート損失 12W ヒーター電圧と電流 6.3V,1.25A
250Vのプレート電圧の時
グリッドバイアス電圧 -28.0V カソード電流 40mA rp 1200Ω μ-6.6 gm 5500μmhos
A1シングルで考察すると自己バイアスの場合 rk 700Ωと推察できます。
比較的内部抵抗の低い 純3極管であり プッシュプルアンプで10W未満のアンプとなります。
現物は山小屋で動作しており 姿写真はありません。
出力トランスは 旧タンゴ CRD-8 を使用しており 電源トランスは 旧タンゴ ST-250 を使用してアンプを組み立てました。常用アンプ外として+Google に記載しています。
最後まで流し読みいただきありがとうございました。古い時代の記憶を元に記述しているため 誤記載、誤解釈がある思われます。ご勘弁ください。文章校正も自己ですので記述間違いが判りません。多少参考となりましたでしょうか ?
by musenan sennin
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